オペラ座の夜ACT2 「税金はどこへ行く?!」
PRESENTED BY TSUTOMU SHIMOGUCHI

更新日07.11.05 コメント:0件 トラックバック:0件

■税金は高い。ボーナスをもらったときの、余りの引かれっぷりなどには愕然としたりするものだ。
では、この税金はどこへ行くのか。国会議員の給料、自治体、公共機関のため。こうしたものに使われるわけだがその中のひとつに“オペラ”が含まれているのだ。
なにせ、もともと金食い虫のエンターテインメントである故、オペラは観客の入場料だけではまかなえない。その補填として、スポンサーによる協賛金や公的な援助金=税金が当てられる(税金が直接使われるというわけではなく、いろいろなところを経由してくる。この辺をきっちり説明するとスペースがなくなるので、割愛をお許しあれ)ものなのだ。

例えば、新国立劇場はその名の通り国の運営であるから、公的なお金が投入されているわけだ。もともと『国民に文化を、芸術を』ということでオペラを上演しているのだから税金を納めている以上、オペラ劇場に行ったほうが自分たちに還元されたことにもなる。また5~6万円もする引越公演(海外の公演がそのまま日本で上演されるもの)でも、会場が公共機関の場合、間接的にではあるが多少なりとも入場料に反映されていることになる。東京文化会館、神奈川県民ホール、兵庫県立芸術文化センターなど公共のホールは公的に運営されている以上、税金が利用されているわけだ。
20071105sinnkokuritu1.jpg

■ちなみに公的援助を入れても2万円、引越公演だと5,6万円もするオペラが、なぜ現代でも上演されるのか。文化や芸術という名目で稟議を通しているのだろう。でも、ここではそんな堅苦しいことは言わない。単純に観て聴いて触れて楽しいから。有意義な時間を過ごせるから。気になる人を口説くきっかけになるから。とっかかりはこんなところで充分だろう。王様が競ってオペラを上演した時代も自分の余暇のため。もしくは自分の権力や財力を見せつけるためといっても過言ではないだろうから。

shinkoku_rose07_070306.jpg
■さて、ここからは近々上演される注目の公演を取り上げてみたい。とは言っても、普通のクラシック音楽誌などが取り上げる切り口では勿論ないのでご安心を。
あなたはジョナサン・ミラーという人物をご存じだろうか。オペラ通の方は演出家と答えるだろう。そう、彼が演出を手がける「ばらの騎士」「ファルスタッフ」(シェイクスピアでいうフォールスタッフのこと)が6月に、東京・新国立劇場で上演されるのだ。
このジョナサン・ミラーという人、医者・俳優・テレビプロデューサーなど様々な顔を持っている。中でも注目は60年代から70年代へかけて英国で一斉を風靡したコメディ・グループ=ビヨンド・ザ・フリンジのメンバーだったこと。他の顔ぶれはアラン・ベネット、ピーター・クック、そしてダドリー・ムーア。特に日本ではダドリー・ムーアが映画「ミスター・アーサー」でアカデミー賞にもノミネートされているので、その名を知る人も多いだろう。

彼らの舞台は後にザ・ビートルズの名プロデューサーとして名を馳せるジョージ・マーティンの手でレコーディングされている。取り上げている笑いは娯楽性がありながらも風刺や政治、社会への疑問を投げかけるもので、後にオックスブリッジ・マフィアというムーブメントを生み出す。それは名前の通り、オックスフォードやケンブリッジなど名門大学を卒業した人たちによる知的な笑いの提供である。このムーブメントの中には、あのモンティー・パイソンも名を連ねている。
正に現代の英国コメディの礎を作ったのがビヨンド・ザ・フリンジ、そしてジョナサン・ミラーと言えるかもしれない。そんなウィットに富んだ彼のオペラ演出はコメディをやっていた時と同じで、表面的には娯楽性を崩さないものの、きっちりと問題を定義している。観ていて単純に楽しい、という見方もできるし、ふと考えると深みのある問題が提示されていたりもする。70年代からは、オペラ演出家としてもキャリアを積んだ彼は、今ではその道でも巨匠の一人ということもできる。
そんな英国風の知的な娯楽を楽しみに、東京・初台にある新国立劇場へ足を運ぶのもいいと思うのだが・・・。


P R O F I L E __________________________________
下口 努(しもぐち つとむ)
opeashimoima.jpg1966年 東京生まれ
映像プロデューサー、音楽愛好家。FM横浜、J-WAVEなどラジオ・ディレクターを経てCS放送の音楽専門チャンネルに転職。テレビ・ディレクター/プロデューサーとして夏のフェスティバルやアンプラグドなど数多くの音楽番組を手がける。現在は様々なエンターテインメント専門チャンネルを運営するCS局でプロデューサーとして活躍している。共著に「ワーグナーの力」(青弓社)がある。
______________________________________________

ブックマーク

コメントする

トラックバック

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.you-next.jp/admin-younext/mt-traba.cgi/16

最新のコメント
気になる情報
advertisement