オペラ座の夜ACT3 「芸術?!入門」
PRESENTED BY TSUTOMU SHIMOGUCHI
更新日07.11.08 コメント:1件 トラックバック:0件
■今年はちょっとした美術ブームとなっている。
ダ・ヴィンチの傑作「受胎告知」が日本初公開。六本木には国立新美術館も開館。今秋にはフェルメールやムンクの名画が日本へ集結する。ちょっとした好奇心から芸術に触れてみよう、と思い立ち美術館などに足を運ぶ人も多いはずだ。そして絵画の魅力に浸った後に総合芸術などとうやうやしく呼ばれたりもするオペラ鑑賞というのもいいだろう。
鍛え抜かれた人間の“声”を生で楽しむだけでなくフル・オーケストラによる演奏、華やかな美術などいろいろな要素が交わり目の前に現れる。これがごく一般的なオペラに対するイメージだろう。
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■実はオペラ、難しく考える必要はない。
あなたは「映画が好きですか」と聞かれたらなんて答えるか。ほとんどの人は程度の差はあれ「好き」と答えるはず。でも「どんな映画が好き」と聞かれたら「ラブ・ロマンス」「大河ドラマ」「コメディ」「SF」、はたまた「ミステリー」などと答えるはず(もちろん俳優で選んだりもするが)。
実はオペラにも同じことが言える。オペラの中にもジャンルが存在する。当たり前なことだ。映画を観るのと同じ感覚で自分の好きなジャンルからトライするのもいいだろう。実は私もちょっとした好奇心からオペラにはまっていったのだ。
■音楽を愛好しだしたのは小学生の頃。姉がクイーンのシングル「キラー・クイーン」を購入してきて何度も何度もリピートして楽しんだ普通の音楽少年だったわけだ。(ちなみにそのクイーンのフレディー・マーキュリーが敬愛するシンガーがオペラのモンセラート・カバリエだと後に知る)中学生になるとヘヴィ・メタもかじるようになる。リッチー・ブラックモアが弾くギターソロをきっかけにバッハという作曲家を知った。映画「地獄の黙示録」では「ワルキューレの騎行」。これは後にワーグナーの「ニーベルングの指環」の第一夜「ワルキューレ」の第三幕への前奏曲の別名と知る。こうしたことをきっかけにクラシック音楽への興味が広がって行き、チャンスがあれば触れてみたいと思ったわけだ。
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■それを実行に移したのはロンドンを旅行で訪れたとき。
初めて観たのは「フィガロの結婚」。会場はイングリッシュ・ナショナル・オペラ。豪華絢爛でパヴァロッティやドミンゴなどスター歌手が登場するロイヤル・オペラに対して、小粒ながらよく練られた舞台が注目の歌劇場だ。選んだ理由は旅行中に上演していてなおかつモーツァルトの名前はさすがに知っていたから。感想は「キラキラした歌声に感動して大掛かりな美術に大興奮。オケの生の迫力に体の震えが止まらなかった」ということはまったくなくはっきり言って「退屈だった」というのが正確なところ。なにせ「フィガロの結婚」は当時オペラ初心者の私にとって3時間半(休憩込)は長い。外国なのでもちろん日本語字幕はない=何が起きているのか勝手な妄想するしかない。しかも欧州の劇場らしく空調がほとんど効いていないため意識が飛びそうになる、というアホ極まりない状況だったのである。
話は横道にそれるがオペラは昔からある。
過去、夏の気温が高くなる季節に空調のない劇場では歌劇を上演できなかったのだ。こうしたことから通常オペラのシーズンは秋から翌年の春までのところがほとんど。現在でもこうした伝統はほぼ生きている。まだ開場10年の東京・新国立劇場でもそれを踏襲している。
■話を戻そう。それでも生のオーケストラによる音楽が奏でられた舞台作品は新鮮だった。舞台美術には驚かされた。豪華絢爛ではなく緑で統一された壁がひとつあるくらい。ところがそれをスライドさせ有機的な舞台へと変化していく。このシンプルな美術は自分の発想の貧弱さに活を入れてくれた。
そんな私が予想外の感動を得られたオペラは先に述べた「ニーベルングの指環」第二夜「ジークフリート」をロイヤル・オペラで体験したとき。「地獄の黙示録」のそれを知っていたし全てを上演すると4日間かかり上演時間は約16時間というシロモノの一部。そんなすごい作品を観るしかないと勝手に思ったわけだ。休憩を入れて5時間30分に及ぶこの公演は素晴らしいというよりポップ調の明るい舞台で、そこには神話がまったく存在しない世界。英雄ジークフリートが伝説の名剣ノートングを鍛えるというシーンがあるのだが、鍛冶屋がハンマーを振り回しながら演じられると思ったら、なべに入れ煮て電子レンジで仕上げていた。これは極端な例だが「そうか、オペラとはその音楽、台本に書かれているのは記号に過ぎないんだ。それを指揮者や演出家は解釈して私にわかりやすく、共感できるようにしてくれるんだ」と気づいた。これによりいきなり自分の価値観が広がっていった。もっといえばひとつの面からしか判断してはいけない、と日ごろ心がけるようになったものだ。自分にとって有意義と判断してからはどんどんはまっていくには簡単だった。
■最後に映画と同じようにジャンルにより楽しめるオペラ作品を羅列してみる。
字幕付きというのも考慮して選んでみた。今月は王道“ラブロマンス”
※プッチーニ「ラ・ボエーム」
主役の若者たちが貧しいながらも夢に向かって生きて行く。ミュージカルや映画にもなった「レント」の元ネタでもある。
お薦めはミラノ・スカラ座で行われた公演。古風な舞台だが安心して観られるかもしれない。
※シュトラウス「ばらの騎士」
若いツバメが本当の愛に目覚め自分のところから旅立っていくのを大人の女性らしく毅然と振舞う姿が魅力のオペラ。宝塚でも取り上げられている。主役の男性をメゾ・ソプラノという女声が演じることからも一種の「ベルサイユのバラ」の雰囲気もある。
お薦めはカルロス・クライバーという名指揮者による快活な舞台。
※ヴェルディ「椿姫」
高級娼婦という現代人からは想像もつかない女性が知った純愛物語。最終的には肺病で亡くなるというお話。主役のヴィオレッタはソプラノ歌手としてあらゆる音域を網羅する難役。
お薦めはヴェニスのフェーニチェ歌劇場による舞台。過去のオペラを現代の物語として取り上げている。
※ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」
トリスタンが自らの王の嫁となるイゾルデを運搬中、秘薬により愛し合うようになる。それがもとで巻き起こる悲劇。こんな単純な話が4時間かけて上演される壮大な作品。
最近では映画にもなった。
お薦めはこちら。一昔前の体格をした歌手達の熱演が楽しめる。
※ドニゼッテイ「愛の妙薬」
上の「トリスタンとイゾルデ」のように秘薬は出てくるが嘘っぱち。自分の愛する女性をどうにか振り向かせようとする純朴な男性のコメディ。お薦めはこちら。オペラ界で大人気のヴィラゾン、ネトレプコの共演。この2人が出るとチケットの争奪戦は熾烈。
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■下口 努(しもぐち つとむ)
1966年 東京生まれ
映像プロデューサー、音楽愛好家。FM横浜、J-WAVEなどラジオ・ディレクターを経てCS放送の音楽専門チャンネルに転職。テレビ・ディレクター/プロデューサーとして夏のフェスティバルやアンプラグドなど数多くの音楽番組を手がける。現在は様々なエンターテインメント専門チャンネルを運営するCS局でプロデューサーとして活躍している。共著に「ワーグナーの力」(青弓社)がある。
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ZAKK
さん 07.11.19
オペラとロックで繋がり結構ある?