オペラ座の夜ACT7 「オペラとスキャンダル」
PRESENTED BY TSUTOMU SHIMOGUCHI
更新日07.12.12 コメント:0件 トラックバック:0件
「オペラとスキャンダル」
■前回まで夏のオペラを紹介させてもらったらすっかり冬になってしまいました。本来冬の娯楽であるオペラも各地で新シーズンが開幕。いろいろ注目すべき公演が出てくるだろう。
■我が日本のオペラハウスでもある新国立劇場も開幕。入場率が9割り近い数字をはじき出し順調に滑り出した。
▼東京・新国立劇場
ただ入場率が順調なだけであって開幕後3演目連続主役級のキャスト変更という問題も浮き彫りに。以前の新国立劇場は例え小さな役のキャストの変更であったとしてもチケットの払い戻しに応じていたのだが今シーズンよりそれを廃止。そうしたら抜群のタイミングでいきなりこれだ。さすがオペラとスキャンダルは深い関係で結ばれている。
■実は日本ではそれほど大それた話はまだ聞かないが海の向こうは実はよくあること。有名な話ではあのマリア・カラス。1958年ローマ歌劇場でVIP臨席の大事な公演をキャンセルしてしまった。彼女を追うマスコミから逃れるために裏にあるホテル・クイリナーレから脱出したらしい、というお話。
▼写真は本文中にあるマリア・カラスが逃亡した時に使用した抜け道のホテル・クイリナーレ側の入り口。
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■最近では2006年12月のイタリア、ミラノ・スカラ座。このシーズンの開幕演目に彼らは鳴り物入りで「アイーダ」を選んだ。しかも大人気テノール、ロベルト・アラーニャが久々に登場するので注目を集めた。この注目というのは2つ意味
がある。通常のように素晴らしいテノールが登場するから、というのと素晴らしいと言われているけど本当にそうなのか、という疑心による注目である。ボクシングの亀田選手や横綱、朝青龍がこっぴどくやられないか、と注目している人達と同じような感覚と言っても良いかもしれない。スカラ座の初日は慣例的にセレブがお目見えして華やかな社交場へと変貌する。アカデミー賞などでレッドカーペットを歩いて入場するのを見たことがあるでしょう。あれと同じことが行われているといっても言い過ぎではないだろう。そんなお客様が来ている日は無事に終演を迎えることができた。彼らは「スカラ座の初日に行く」ということを全うするのが目的だったりもする。ちなみにこの日は通常料金170ユーロの席がなんと10倍以上の2,000ユーロ=約33万円。
■ところが一般のオペラゴーアも参加できる2日目以降はそうはいかない。明らかにアラーニャにブーイングを飛ばそうと堅く決心した(であろう)客も含まれていた。「清きアイーダ」というオペラがはじまってすぐに歌われるアリアで事件は起こった。曲がはじまる前から一部で罵声。終わった途端はあからさまなブーイングが聞こえたのだ。通常ならここでぐっとこらえて物語は進むのだがこの日は違った。アラーニャは激高して拳をあげて退場してしまったのだ。もちろんそれ以降彼は出演をキャンセル。代役が穴を埋めることになった。ちなみに退場してしまった日も急遽代役が登場(オペラハウスは危機管理のためカバーと呼ばれる代役を常に準備しておくのが通例)。しかし着替えは間にあわずツタンカーメンなどが見えるエジプトのセット中にジーパン姿で歌うテノールが場をつないだのだった。
■ここで大変なのは映像スタッフ。イタリアのナンバー1オペラハウス。しかも演目は国を代表する作曲家ジュゼッペ・ヴェルディの名作「アイーダ」。演出家はスペクタクルをやらせたらナンバー1のフランコ・ゼッフィレッリ。少しでも経費回収のため映像販売を考えていたのに違いない。通常こうした場合の商品化は上演も慣れてきて調子の上がってきた日程で数日に分け収録する物。ところが収録できたのは初日のみ。先日発売されたこのDVDを見ると編集を担当したスタッフの努力が手に取るようにわかる。とにかく映像素材が無いことが想像できるのだがCGや不自然なクローズアップを入れ作品として耐えうるレベルに持っていっているのだ。21世紀の現代、スキャンダルがこうして形を替えてパッケージ化されてしまう恐ろしさもあわせて感じてしまった。それはまるで朝昇龍や亀田一家の記者会見が中継されるのと同じことかもしれない。
★ヴェルディ ( Giuseppe Verdi ) DVD 歌劇『アイーダ』全曲

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【演奏】
ロベルト・アラーニャ(ラダメス)
ヴィオレータ・ウルマーナ(アイーダ)
イルディコ・コムロシ(アムネリス)
ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
リッカルド・シャイー(指揮)
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
☆★ホテル・クイリナーレに泊まってみたいという方は…
http://www.hotels489.com/italy/dtl/r13/index.htmlにアクセス
■P R O F I L E __________________________________
■下口 努(しもぐち つとむ)
1966年 東京生まれ
映像プロデューサー、音楽愛好家。FM横浜、J-WAVEなどラジオ・ディレクターを経てCS放送の音楽専門チャンネルに転職。テレビ・ディレクター/プロデューサーとして夏のフェスティバルやアンプラグドなど数多くの音楽番組を手がける。現在は様々なエンターテインメント専門チャンネルを運営するCS局でプロデューサーとして活躍している。共著に「ワーグナーの力」(青弓社)がある。
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