篠原 榮太の世界「文字をデザインするということ!」
「テレビタイトルに見るカリグラフィの魅力」
更新日08.01.21 コメント:0件 トラックバック:0件
皆さん、
Calligraphy(カリグラフィ)という言葉をご存知ですか?
■一般的にはあまり聴き馴染みのない言葉ですが、「西洋(アルファベット)の書道」と思って頂ければ判りやすいかと思います。その語源はギリシャ語のCALLI(美しい)とGRAPHEIN(書くこと)に由来しており、6世紀のヨーロッパで生まれ、写本がその起源とされています。
アルファベットを美しく描くことは勿論、それに関わる紋様、動植物等を装飾的にデザインされたものもあり、広く平面、立体に使用されています。ヨーロッパでは、お店の看板や表札など、街のいたるところで目にすることができます。
■日本も古来、「書」というものがあり、脈々と現在に受け継がれていますが、敢えて「書」のことをカリグラフィと置き換えても過言ではないでしょう。しかしそのまま、デザインの中で使用する言葉としては「書」はなかなか使いにくい言葉で、ややもすれば、流派を重んじる「書道」の方へ意識が向いてしまう。そこで現時点では仕方なく?日本でもカリグラフィという言葉をデザイン業界では使っている状況なのでそうです。また日本の伝統的な書から、現代の書風もグラフィックデザインの領域で、会社名や商品名(ロゴ)、看板の文字なども広義の意味ではカリグラフィと言えるでしょう。そして、現在私達を取り巻く様々なシチュエーションにおいてカリグラフィを目にしているのです。
■中でも映画、テレビのタイトルは本で言うところの表紙にあたるもので、物語の内容とオーバーラップした形で私達の印象に深くの残る場合が多いのではないでしょうか。とりわけテレビは最も身近なメディアのひとつで、幅広い番組の多様性からも老若男女に愛されているメディアです。そして未だに影響力の最も強い存在です。
そこで今回、1955年のTBS開局以来手掛けてきた篠原榮太の作品を見ながら、テレビタイトルに見るカリグラフィの魅力を探っていきます。同時に日本語(文字)の素晴らしさを少しでも理解できればと思っております。
■テレビタイトル(正確にはテレビタイトルロゴタイプといい、また意味合いからすれば番組タイトルということになります)と言えば、「篠原 榮太」の存在なくして決して語ることはできません。
とは言うものの、テレビ、デザイン業界では著名な先生なのですが、皆さんの中で一体何人の方が篠原榮太を知っているでしょうか?ご存知の方はかなりカリグラフィに精通しているといえるでしょうね。
ところが、「3年B組金八先生」「渡る世間は鬼ばかり」「金曜日の妻たちへ」「男女7人夏物語」などのテレビタイトルは?というと年齢の差こそあれ、おそらく殆どの方が知っているでしょう。ましてやYOU-NEXT世代の人なら番組のタイトルデザインもイメージできるのではないでしょうか。篠原榮太はこのテレビタイトルの仕事をTBSが開局した1955年から続けているのです。前述しましたタイトルはほんの一部でこれまで膨大な数のタイトルを手掛けてきました。あれもそうなんだ。これもか!など私たちスタッフも驚きの連続で、特に「コンバット」のあのロゴも篠原榮太の作品と知り感動しました。
日本語には表意文字である漢字をはじめひらがな、カタカナ、時には外国語の文字も含まれます。それらを巧みに使い分ける日本人の文字に対する感性はかなり独特のものがあります。これは筆者の勝手な思い込みですが、文字ではなく全体をデザインとして無意識に捉えているのではないでしょうか。
■それはさておき、普段何気なく目にするテレビタイトルですが、作者である篠原榮太はどんな想いで制作に取り組んでいるのでしょう?こんな言葉が返ってきました。
「連載もののテレビ番組なら毎週、タイトルは露出されるが、単発ものの特集などだと1回しか露出しない。なにか儚いものです。例えば、2時間の番組でもタイトルが流れるのは最初のせいぜい1分くらい(長くて2分)。インパクトとしてはそれこそ最初の10秒だけかもしれないと考えると、だからこそ「一瞬に命を賭ける」といったような緊張感が生まれてくるのでしょうね。
そして視聴者に内容の鼓動を感じさせ、ムードに誘い込み、見終わったあとも、深く印象に残り、更に、次回も続けて見たいと思わせるようなタイトルに挑戦しているつもりです。」
そんな篠原榮太の熱い思いがテレビタイトルに込められていたとは!テレビタイトルにかける男の生き様がそこにはありました。
※そしてこんなことも話しておりました。
「忠臣蔵」のタイトルのオープニングで四十七士がそれぞれ名前を書いて血判をした連判状の巻物になっているものを大広間に勢いをつけて一気に開くものを作って欲しいとの演出の注文があったのですが・・・、
四十七士なので四十七名のそれぞれ筆跡の違う文字で書くということと、連判状なので、それぞれ武士の心の緊迫感を表さなければならない。そして一巻しかない巻物なので書き直しが出来ないということで、その時の緊張感はいまだに忘れられない。
「篠原 榮太のテレビタイトルGALLERY」
※TBSのドラマは素晴らしい作品がたくさんあるので、その中からどの番組タイトルを選んだら良いのか正直苦労いたしました。スペースの限りもありますので、筆者の独断と偏見でティピカルな6作品のタイトルを掲載させて頂くことにしました。
■渡る世間は鬼ばかり(わたるせけんはおにばかり)
主人公の岡倉大吉と5人の娘の家族の暮らしぶりを描いた、最早、国民的な人気のホームドラマ。
現在までに第8シリーズが放映されており、2008年4月より第9シリーズの放送が予定。1990年にTBSが創立40周年を記念して企画されたドラマでこの番組の知名度は明らかに上位にランクされるもの。
ブログでも「ワタ鬼」の愛称で様々な書き込みがあり次回を愉しみにしているファンがたくさんいる。
※渡る世間は鬼ばかり公式サイト
http://www.tbs.co.jp/oni/
■コンバット!(英:COMBAT!)
米国放送局ABCで1962~1967年に放映されたテレビ番組。第二次世界大戦下の米国陸軍の兵士を扱った戦争ドラマであるが、人間の尊厳、友情、信頼などを描いたヒューマン・ドラマである。日本ではTBS系列で1962年11月に放送開始。吹き替え版で152本が放映された。人情味溢れるサンダース軍曹、マーチ調のテーマ曲、当時の子供たちには絶大はインパクトがあったようだ(かく言う筆者もその1人である)。
▼篠原榮太(談)
「コンバットのタイトルは書いたものではなく、黒紙をハサミで切った文字の部分を手でちぎったもので、建造物とか器物が戦争によって壊されているイメージをもとにデザインしたタイトルロゴです。」
■3年B組金八先生(さんねんビーぐみ きんぱちせんせい)
1970年(昭和54年)10月のスタート以来、長くにわたって親しまれてきた長寿番組。いまさらにこの番組の説明をする必要はないだろう。現在、8シリーズ目が放映されており、その人気ぶりがうかがい知れる。坂本金八先生役の武田鉄矢氏(坂本金八先生役)代表作でもある。「暮れなずむ~」から始まるテーマソングも大ヒット。学園ドラマ、教育ドラマでという枠を超え、日本人の心に何かを訴えかける温もりを感じさせるストーリーとタイトルロゴが絶妙のバランスを見せている。
※3年B組金八先生公式サイト
http://www.tbs.co.jp/kinpachi/
■輝く日本レコード大賞(かがやく にほんレコードたいしょう)
1959年に始まった「日本レコード大賞」(音楽に関する賞で最も有名で権威のある賞)の授賞式の模様を伝える放送番組名。TBS系地上波全国28局ネットとラジオ(JRA全国17局ネット)で生中継される。「レコたい」の愛称で知られるように国民的番組としての今もその地位は揺るぎない。また民放においてテレビ&ラジオの数少ない放送番組でもある。年末の日本の風物詩のひとつとも言える番組。
▼篠原榮太(談)
「このタイトルは、歌謡曲では演歌が流行していた時代だったので、イメージとして毛筆「カリグラフィ」で書いたタイトルです。」
※輝く日本レコード大賞公式サイト
http://www.tbs.co.jp/program/nihonrecordtaisyo_20061230.html
■女たちの忠臣蔵(おんなたちのちゅうしんぐら)
1979年12月にTBS系の「東芝日曜劇場」の1200回記念として放送されたドラマ。
タイトルからの忠臣蔵を扱ったテーマで42.8%の高視聴率を記録した感動巨編。浅野内匠頭、吉良上野介などは登場せず、忠臣蔵の物語にまつわる女たちを主役に描いた史上初のドラマである。大石内蔵助の妻「りく」を中心に、討ち入りの直前の十日間に重点を置き、夫や恋人との愛と別れが切々と描かれている。舞台版も何度も上演されている。
■風雲!たけし城(ふううんたけしじょう)
画期的な視聴者参加型のアトラクション・バラエティ番組。TBSで1986年5月から1989年4月まで毎週金曜日の20:00時から1時間番組として放映された。ビートたけしが城主をつとめる、難攻不落の「たけし城」を討ち落とすため、毎回100人ちかい一般応募者からなる攻撃軍が様々な難関(緑山スタジオ内に設営)を突破していく。ちなみに攻撃軍の隊長は谷隼人。正式な番組名は「痛快なりゆき番組 風雲たけし城」。とにかく理屈抜きで面白かった。
※尚、タイトルロゴ使用の許諾を承認して下さったTBS著作権管理のご担当者様、ありがとうございました。
「篠原 榮太先生のPROFILE」
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■東京生まれ。アートディレクター。
映像デザインとともにグラフィックデザインにおいても受賞多数。TV-CMスポット ACC銀賞、TBSテレビ局名スポット 最優秀賞、NACC展 日本タイポグラフィー協会賞、タイトルデザインで橋田賞他。
「3年B組金八先生」「渡る世間は鬼ばかり」「コンバット」「男女7人夏物語など手掛けたテレビタイトルは数えきれず。
■デザイン事務所のデザイナーであった頃、「黄金の腕」(あるギャンブラーをテーマにした映画)を見てそこで映画のタイトルの素晴らしさに感銘した。タイトルの文字とバックの映像と音楽、これが三位一体となってものすごいインパクトを生み出していることに気が付いた。そのタイトルデザインをしていたのがアメリカのデザイナー「ソウル・バス」という人物(グラフィックデザイナー)だった。こういうグラフィックの世界もあるのか、自分も映像とタイトルデザインの仕事で少しでもソウル・バスに近づきたいと思うようになった。
※ソウル・バスは「80日間世界一周」、ヒッチコックの「鳥」など数多くのタイトルを手掛けているがとにかく映像、音楽とのマッチングが絶品であるとのこと。
■そこで1955年TBSがスタートとすると同時にTBSに入ってテレビの番組タイトルの仕事をするようになった。しかし、映画とテレビでは予算の関係もあり、また当時のアメリカと日本ではデザインに関する意識の違いからか、TBSでのタイトルデザインの仕事をしていた最初のころはとにかく、タイトルに関する興味、重要性への想いが希薄で、まずはデザインを大切にするという意識改革のための環境創りにも奮闘した。
※以下は「雪」「雷」のカリグラフィ![]()
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タイトル・デザインを手掛けて50年程になるのですが、その感性は衰えを知らず創作意欲に燃えています。最近もTBSの連続ドラマ「ふくまる旅館」のタイトル文字を制作するなど、いつお逢いしてもイキイキとしていらっしゃいますね。先生のデザインの仕事にかける情熱は本当に熱いものがあります。これにはただただリスペクトあるのみです。俺も篠原先生のように歳がとれたらいいなあ~!とはある編集スタッフの言葉。
テレビタイトルのロゴもこうしてひとつひとつ改めて見てみると、番組の内容とあいまって間違いなくそのロゴが記憶の中にしっかりしまい込まれていたことに気がつきました。番組タイトルというものがもし、すべて同じ書体、一定の大きさで表現されたならば、どこか殺伐として番組の印象度も少し希薄になってしまうのでは!? ただ単に見た目のマッチングだけではなく、その内容までをも表現するということを担っているデザインされた文字というのは、まさにムードを現す「顔」なんだなあと思いましたね。また、漢字、ひらがな、カタカナは言うに及ばず英語、フランス語など他の言語をも縦横無尽に取り入れ、完成されたひとつの美しいデザインとして魅せることができる日本語の巧みな美しさや特異性を再認識しました。(ZAKK)
▼最後に…、篠原榮太先生に多大な影響を与えたソウル・バスなる方とはどんな人でしょうか?
以下に簡単なプロフィールをまとめてみました。
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Saul Bass(ソウル・バス)
1920年5月8日~1996年4月25日
■ニューヨーク出身。アメリカ人のグラフィック・デザイナー。
映画界においてタイトルデザインの分野を確立した人物として有名。映画ポスターや予告編などの制作の後、1954年にオットー・プレミンジャー監督作品の「カルメン」でタイトルデザインを初めて担当。その後もビリー・ワイルダー「七年目の浮気」、ロバート・ワイズ「ウエスト・サイド物語」、マイケル・アンダーソン「80日間世界一周」などなど多数の映画
作品にデザインを提供した。
タイトルデザイナーとして特筆されるのはオットー・プレミンジャーとアルフレッド・ヒッチコック両監督との仕事であろう。プレジンジャー監督の「黄金の腕」、ヒッチコック監督「サイコ」などはタイトルのみならずタイトルを総合的に演出するなど、まさにインパクトのある画期的な手法を魅せている。
彼はタイトルデザインに留まらず自分で短編映画を撮影し受賞暦もあり、映画に対する思い入れは相当のものがあったのだろう。
「エイリアン」(1997年)、「敦煌」(1988年)のタイトルも彼の作品である。
最後の作品となったのはスコセッシ監督の「カジノ」(1995年)でその翌年1996年75歳で他界した。
ソウル・バスはグラフィック・デザイナーとして様々な企業のロゴ、CIも手掛けた。
日本の企業ではミノルタ、紀文食品、コーセー化粧品など
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