オペラ座の夜ACT10 「オペラと映画」
PRESENTED BY TSUTOMU SHIMOGUCHI
更新日08.03.11 コメント:0件 トラックバック:0件
「オペラと映画」
The Copyright Marco Brescia/Teatro alla Scala
![]()
▼私事で恐縮だが今年はじめイタリア・ミラノへと足を運んだ。ワーグナーの大作「トリスタンとイゾルデ」の上演を観るためだ。
ミラノでは「トリスタンとイゾルデ」というポピュラーながらドイツ・オペラというせいか約30年ぶりの上演となる。足を運んだ最大の目的は演出家にある。
The Copyright Marco Brescia/Teatro alla Scala
![]()
Patrice Chéreau
![]()
▲「王妃マルゴ」「愛する者よ、列車に乗れ」等の映画監督でもあるパトリス・シェローが担当したからだ。彼は舞台演出家として活動もしているが1976年ワーグナー上演の聖地、ドイツ・バイロイト音楽祭で上演された「ニーベルングの指環」を演出して決定的な評価を得た。そんな彼がこれまた約30年ぶりにワーグナーを手がける、というのが切り札になったのだ。彼の演出は舞台人らしくオペラっぽいただ立ったままの歌唱は皆無全てリアルな人物として演じられる。全て歌詞、そして音楽に密接にリンクした舞台を作り上げていくのだ。
ということで今回はオペラの世界だけでなく
演出家として映画界の著名人を迎え入れた
注目の舞台を紹介してみたい。
▼まずはこちらから。映画といえばハリウッド。そのハリウッドのお膝元、ロスアンジェルスで今秋上演されるのがプッチーニ生誕150周年を記念した「三部作」。「外套」「修道女アンジェリカ」という2つの悲劇と「ジャンニ・スキッキ」という喜劇を一晩で上演するこの作品。「外套」「修道女アンジェリカ」の2つを手がけるのがウィリアム・フリードキン。70年代一世を風靡したあのホラー映画の金字塔「エクソシスト」の監督だ。特に妻の不倫を知った夫が浮気相手を殺害するというおどろおどろしい作品である「外套」をどう舞台表現するのか注目。
William Friedkin
![]()
▼もう一つ、喜劇の「ジャンニ・スキッキ」の演出はなんとウッディ・アレン。遺産を抱えたまま他界した資産家の遺言を巡るこの喜劇は笑いの中にもぴりっとしたスパイスを入れることに天才的な彼がどんな形で上演するのか注目される。
Woody Allen
![]()
▼またこの時期同じロスアンジェルスでは注目の新作オペラが上演される。
アカデミー賞の受賞した映画音楽家、ハワード・ショアのオペラ「ザ・フライ」。これでピーンと来た人も多いと思う。そう1986年に公開された映画「ザ・フライ」がオペラになるのだ。しかも映画そのものの監督でもあるデヴィッド・クローネンバーグ自ら舞台演出も手がける。そして指揮で花を添えるのは3大テノールとしても知られるプラシド・ドミンゴ。ちなみにこの作品、一足先に今年の7月パリで上演されてからほぼ同じキャストでLAに登場することになる。
David Cronenberg
![]()
![]()
▼続いては今夏、フランス、エクスプロヴァンスで上演されるモーツァルトの「コジ・ファン・トッテ」。“恋人達の学校”という副題を持つこの作品は自分の彼女の貞操を信じて疑わない男達が賭に出るというお話。こちらの演出を手がけるのはイランの映画監督アッバス・キアロスタミ。第50回カンヌ映画祭で今村昌平監督の「うなぎ」と共に最高賞であるパルムドールを獲得した「桜桃の味」の映画監督だ。フランスで評価される彼のオペラ挑戦がどう評価されるのか注目される。夏の南フランスへヴァカンスのついでにオペラ観劇なんて気軽に来た観客に大きな問題提示をしてくれるかもしれない。
Abbas Kiarostami
![]()
▼続いては私の願望になるが観ておきたかった舞台として2006年冬季オリンピック、荒川静香フィーバーが起きたトリノでその時期に上演されたオペラを紹介させてもらう。作品はプッチーニ「マノン・レスコー」。もともとトリノで初演された作品だけに力を入れた公演だったようだ。演出はなんと日本でもおなじみのフランスの名優ジャン・レノだったのだ。本年はプッチーニの記念イヤー。どこかで再演がないか期待してみたい。みなさんも情報を手に入れたらお知らせしたい。
Jean Reno
![]()
▼最後に紹介するのは昨年オーストリア、世界遺産ノイジ-ドラ-湖で行われるメルビッシュ音楽祭で上演されたヨハン・シュトラウスのオペレッタ「ウィーン気質」。先日NHKでも放送されたのでご覧になったかたも多いと思うが演出を手がけたのは映画「ニュルンベルグ裁判」で アカデミー主演男優賞を受賞したオーストリアの盟友マクシミリアン・シェルだ。オペレッタというと“おもしろおかしく”ということを優先させるのが常だが彼はしっかり舞台となったナポレオン戦争終結におけるウィーン会議が舞台となったことを明確にヴィジュアル化して一石を投じた。
Maximilian Schell
![]()
←こちらの作品は近々DVDでも手にはいる
ので興味のある方はどうぞ。そのさいNTSC
(日本のテレビ方式)と指定することを忘れないで
下さい。
こうしたようにオペラはオペラ界だけでなく様々な人達から興味を抱いてもらえるようにあの手この手を考えて舞台を制作しているともいえる。あなたの自身のちょっとした接点からきっと興味ある舞台と出会えるはず。
■P R O F I L E ____________________________________
■下口 努(しもぐち つとむ)
1966年 東京生まれ
映像プロデューサー、音楽愛好家。FM横浜、J-WAVEなどラジオ・ディレクターを経てCS放送の音楽専門チャンネルに転職。テレビ・ディレクター/プロデューサーとして夏のフェスティバルやアンプラグドなど数多くの音楽番組を手がける。現在は様々なエンターテインメント専門チャンネルを運営するCS局でプロデューサーとして活躍している。共著に「ワーグナーの力」(青弓社)がある。
________________________________________________
▼関連作品をご覧になる方はコチラをチェックして下さい。












コメントする