「パフォーマンスの壺」
第15回「選曲方法をもう一度考えてみる。」
PRESENTED BY HIROO SATO
更新日08.12.10 コメント:0件 トラックバック:0件
■みなさんは有名なバンドやミュージシャンのコンサートに行く機会も多いと思います。
たとえばクラプトンのコンサートを思い出してみましょう。ある年、クラプトンは全曲ブルースのアルバムを出したので、来日公演はブルース中心の選曲でした。ご存知のようにクラプトンはブルースが大好きで、有名な黒人ブルースマンの曲をよく演奏しています。コンサート会場である武道館にはぎっしりのお客さんが詰め掛けていますが、クラプトンが演奏しているブルースナンバーをご存じないお客さんが多いのか? 盛り上がりがいまひとつです。
ところがです。
最後に「愛しのレイラ」のイントロを弾いたとたんに全員が総立ち状態で大盛り上がりになりました。これはなぜだかおわかりでしょうか?そうです。みなさん、よくご存知の曲だからです。演奏していたブルースナンバーも有名な曲ではありますが、ブルースマニアのみなさん以外にはどうもピンと来ないかもしれません。しかし、ステージにいるのは天下のクラプトン様であります。それなのにレイラのイントロまでは大盛り上がりはしなかったのです。これはその日のお客さんのノリが悪かったということではありません。何しろレイラで総立ちですから。(私はブルース大好き人間ですからむしろ大歓迎です。)
さて、今回はこれを踏まえて
「選曲」という面からステージング術を
考えてみたいと思います。
■前述のクラプトンはブルースでは盛り上がらず、レイラで大盛り上がりになりました。
さて、あなたはライブハウスで誰も知らないあなたのバンドのオリジナル曲だけを演奏しているとします。「知らない曲」と「有名曲」という点で考えてみたときに、あなたのバンドの演奏で見知らぬお客さんは大盛り上がりしてくれるでしょうか?
ちょっと意地悪な質問でしたね。
実はこの例からおわかりいただけるように選曲というのは実に重要なものなのです。クラプトンはもしかしたら「日本のお客さんはレイラを演奏しないと納得してくれない」と思って本当はブルースだけやりたかったのにファンサービスで選曲していたのかもしれません。
ローリングストーンズだってそうです。
新譜を出したのでそのアルバムからいっぱい演奏したいのにも関わらず、それを大幅にカットしてもう何十年も前にやり飽きちゃったかもしれない「サティスファクション」や「ジャンピンジャックフラッシュ」を演奏します。しかし、イントロのギターが鳴るや否や客席は超盛り上がるわけです。あきらかにファンサービスです。
何を言いたいのかといいますと、世界で最も有名なミュージシャンでさえもやり飽きちゃったかもしれない曲を演奏してお客さんを楽しませようとしているということです。
■当店、ルースターの1号店には毎晩プロミュージシャンが出演していますが、その方々の選曲は実は9割以上が有名曲。私が頼んだわけではなく、みなさんそうしているのです。これはなぜなのでしょう?もうおわかりいただけたと思いますが、お客さんのことを考えてそうされているのです。
ところが、アマチュアバンドが一晩に何バンドも出演するライブハウスではこの比率が逆転します。9割がオリジナル曲です。つまり多くの場合、アマチュアバンドはお客さんのためではなく、自分たちが自分たちのためにやりたいオリジナル曲を演奏していると言い換えられるのです。しかも、「自分たちのバンドは3番目の出演なので20時くらいに来てください」などという他のバンドを無視した告知をしています。その上で、誰も知らないオリジナル曲を演奏し、「次のライブは○月○日、どこどこでやります」と他店での情報をステージ上から言い、さらに「CD買って下さい」、告知メールを送るために「アンケートの記入お願いします」などと言うわけです。
こんな感じでは心の底から楽しんでくれるお客さんはよほど仲の良い友達だけかもしれません。さらに悪いことにこういうステージングが普通だと多くのアマチュアバンドの方々は思っているのです。
■実はアマチュアバンドの方々はこういうことを誰も指摘してくれないがゆえに「どうしたらよいのか」がわからない、というよりも「考えたことがない」という状態にあるのです。生演奏を仕事にしている方々は体験でこういうことをわかっていますが、アマチュアバンドはその体験をしていないうえに、仕事ではないから気がつかないのです。
ライブハウスの人がしっかり指導してこなかったことも原因でしょう。
しかし、そういう方々が出演しているライブハウスのブッキング担当の方がちゃんとわかっている人かどうかも怪しいです。ブッキング担当者がわかっている人かどうかを判断するのは簡単です。あなたの出演しているライブハウスはあなた以外のバンドも客観的に見て全バンドが最高かどうかでわかります。もしも最高ならばどのバンドも「他のバンドもぜひ観ていってください」というMCや告知の仕方になるでしょうし、告知せずともお客さんは最初から最後まで聴いて行きたくなるはずですから。
しかし、あなたが喜ばせる相手はライブハウスのブッキング担当者ではありません。目の前にいるお客さんであります。お客さんが喜んでいれば結果的にブッキング担当者も喜んでくれますし、逆に「こういうバンドが増えたらいいのに」と思うようになるかもしれません。
ちょっと脱線してしまいましたが、まず、あなたは他のバンドに「あのバンド面白いから見たほうがいいよ」と言われる存在になれれば良いわけです。そのためにはこれまで書いてきたステージング術はもちろんのことですが、「選曲をどうするか」ということを念頭においてもらいたいのです。
そこでこういう提案です。
■全曲オリジナル曲をやる必要がないのならばあえてオリジナル曲で勝負する必要があるのかどうかから考え直してみるのです。そこに集っているお客さんたちは何歳くらいでどんな客層なのか?選曲はこういう風に決めていくのです。つまり、まず「先にお客さんありき」の発想をするわけです。見知らぬお客さんを自分たちのライブに巻き込み、そして喜んでもらう一番大切なポイントは「どんな曲を演奏するか」です。なぜならばバンドなのですからまずは選曲が大事に決まっています。
しかし、どうしてもやりたいオリジナル曲があるという場合はどうすればよいのでしょう?
実は有名曲の合間に挟むことでよりオリジナル曲が目立つという方法があります。その曲をやる前に「私たちはみなさんご存知の曲だけを演奏していますが、実はどうしても聴いて欲しいオリジナル曲があるのです」と言うのです。すると「そんなにやりたいオリジナルってどんな曲なのかな?」とお客さんは思ってしまうからです。有名曲でお客さんを楽しませながら自分たちのどうしても聴いてもらいたい曲をちょっと混ぜる。ローリングストーンズのコンサートと同じ考え方ですね。
実際のところクラプトンもストーンズもカバー曲だらけです。「これまで散々ライブをやってきたのになんかいつも盛り上がらないんだよなあ」と思っているあなた。
ぜひこの方法を一度お試しいただきたいと思います。
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第01回「ライブステージング術」
第02回「ブルースセッションの楽しみ方」
第03回「うまい拍手の取り方」
第04回「見知らぬお客さんへの配慮を忘れずに」
第05回「してはならない身内ノリ」
第06回「客席との会話が最終的な盛り上がりへ導く」
第07回「ライブ中に困った場合の対処法」
第08回「バンドメンバーをものせてしまうテクニック」
第09回「言ってはいけない言ってしまいがちなMC」-PART1-
第10回「言ってはいけない言ってしまいがちなMC」-PART2-
第11回「ライブ成功の鍵はライブの前の挨拶から」
第12回「ライブ前の知り合いへの挨拶は控えめに」
第13回「お客さんに一緒に振り付けをしてもらうテクニック」
第14回「ライブパフォーマンスはバンド全員でこそ。」
■PROFILE 佐藤ヒロオ
1962年9月18日生まれ。ライブハウス、「荻窪ルースター」、「Rooster NorthSide」オーナー。音楽雑誌などの執筆他、著書に『荻窪ルースター物語』(ポット出版)がある。
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▼「地階から胃薬」
このコーナーはルースター総支配人による不定期更新のコラムです。ルースターの事、総支配人の事、出演者の事、お客様の事をはじめ、ルースターにまつわるいろんな事柄をご紹介しております。お茶でも飲みながらゆっくりとご覧くださいませ。
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