オペラ座の夜ACT20 「本場でオペラ①」
PRESENTED BY TSUTOMU SHIMOGUCHI
更新日09.01.08 コメント:0件 トラックバック:0件
■さて2009年第1回となる今回は年末年始にかけ欧州を廻ってきたのでその報告をさせていただきます。昨年から今年にかけては最大9連休が普通の会社でもとりやすい環境にありそれを利用しての観劇旅行とした。
目的地はドイツ・フランクフルト。オーストリア・ウィーン。そしてイタリア・ピアチェンツァ。
まずはドイツ・フランクフルト。
■ここには現在好調が続いているフランクフルト・オペラがある。
足を運んだ演目は11月に新制作されたばかりのヴェルディの「群盗」。
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この作品はめったに上演されることがなく日本では1999年にびわ湖ホールが取り上げたくらい。初期の作品で1840年代前後、彼が大量にオペラの作曲をしている頃である。そのためよい仕事に恵まれていないという見方も一部ではあるのも事実。こうしたいわゆる傑作といえない作品を取り上げるときはなんらかの要因がないといい上演にならない。それは歌手であったり演奏であったり演出であったり。フランクフルトでは手堅い歌手を揃えたものの正直演出は空振りの感が漂う。
特に序曲が演奏されているときあらかじめ客席に仕込んでおいた歌手が「サムバディ・ヘルプ・ミー」と急病人が出たことを知らせる。もちろん曲は止まり急病人と付き添いは退室そしてステージ上へ。演出家はここで会場の緊迫感をあおるために考えたのだろうがかえってしらけさせてしまう。他にもステージ上の紐を大きな音で落下させたり、群衆=合唱をオーケストラピットから歌わせたり、あの手この手を仕掛けていた。
しかしあからさまな飛び道具は本当によく考え行わないとかえって寒い結果になってしまう、というのを目のあたりにした格好だ。
作品の力が弱いとされているので色々考えたのだろうが音楽面がまとまっていただけに惜しい結果となった。
翌日はオーストリア・ウィーンにひとっとび。
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■1時間半ほどのフライトで到着。今回の旅行で最も期待していたワーグナーの傑作「神々の黄昏」。「ニーベルングの指環」4部作の最後を飾るこの作品は上演に5時間半もかかる大作。
一番注目となるのは指揮者のフランツ・ウェルザー=メスト。現在スイス・チューリッヒ歌劇場の音楽監督を勤める彼がこの新制作の指揮を担当した。最大の注目の理由は小澤征爾の後任としてウィーンの音楽監督の就任が決まっているからだ。本来その時点の音楽監督が振るべき作品を先取りした形だがこれで大失敗すると、決まっていた音楽監督というポストも吹っ飛びかねない状況ともいえる。
そんなことを思いながら触れた上演は歌手との呼吸もばっちり。オーケストラのみの演奏場面はオペラ座の屋根が吹き飛ぶかと思うくらい迫力ある演奏を聞かせてくれた。
結果は大成功。特にカーテンコール時の指揮者への賛辞は多大なもの。オペラ上演が日常になっているウィーンではカーテンコールも結構形式でさっぱり終わるのだがこの日は何度も何度も繰り返し上演へのブラボーが送られた。これで今年の5月に予定されている「ニーベルングの指環」通し上演でよっぽどの失敗をしなければ次期音楽監督のポストは安泰といえるだろう。
今回は前編としてここまでで一旦幕とさせていただく。
この後の報告は来月の後編をお待ちくだされば幸いです。
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■P R O F I L E ___________________________________________
■下口 努(しもぐち つとむ)
1966年 東京生まれ
映像プロデューサー、音楽愛好家。FM横浜、J-WAVEなどラジオ・ディレクターを経てCS放送の音楽専門チャンネルに転職。テレビ・ディレクター/プロデューサーとして夏のフェスティバルやアンプラグドなど数多くの音楽番組を手がける。現在は様々なエンターテインメント専門チャンネルを運営するCS局でプロデューサーとして活躍している。共著に「ワーグナーの力」(青弓社)がある。
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▼▽▼ 「オペラ座の夜」BACK NUMBER ▼▽▼
ACT19 「いい席で観たい!」
ACT18 「ト書きって何?」
ACT17 「新国立劇場、今シーズンの演目!」
ACT16 「クラシックな夏フェス」
ACT15 「ば・ロック」
ACT14 「オペラなファッション」
ACT13 「亜細亜で歌劇」
ACT12 「夏はオペラ」
ACT11 「オペラと現代」
ACT10 「オペラと映画」
ACT09 「オペラの御作法 拍手篇」
ACT08 「オペラのシーズン」
ACT07 「オペラとスキャンダル」
ACT06 「夏もオペラ②」
ACT05 「夏もオペラ①」
ACT04 「伝統か?革新か?」
ACT03 「芸術?!入門」
ACT02 「税金はどこへ行く?!」
ACT01 「オペラは敷居が高い?!」
▼『群盗』全曲 ガルデッリ&ニュー・フィルハーモニア管、
ライモンディ、ベルゴンツィ、カバリエ(2CD)

※フィリップスのヴェルディ初期オペラ・シリーズのひとつ。ヴェルディの『群盗』は、『マクベス』や『イェルサレム』(『第1回十字軍のロンバルディア人』のフランス語への改訂版)と同じ1847年に作曲。シラーの原作に基づくこの歌劇は、ロンドンのハイマーケットで初演されました。イタリアでは同年にローマのアポロ劇場で初演されています。
当ディスクは、プレーンなスタイルで演奏されているだけでなく、対立する兄カルロと弟フランチェスコの役を、ベルゴンツィと2005年に惜しくも亡くなったカプッチッリという2大名歌手が演じ、さらにヒロインにはカバリエまでフィーチュアされるなど、これ以上ないほどに充実したキャストです。さらにミッド・プライスの上、リブレットが付けられているというお得盤(日本語訳は付きません)。『群盗』の全曲盤はきわめて珍しいので、ヴェルディ・ファンやオペラ・ファンは必携のアルバムと言えるでしょう。(ユニバーサルIMS)
▼『神々の黄昏』全曲 カイルベルト&バイロイト

カイルベルトの『神々の黄昏』(1955)
ステレオで登場!
※世界初のステレオでの『ニーベルングの指環』の録音は、1958年から1965年に行われたショルティ/カルショウによるスタジオ・セッションではありません。1955年夏のバイロイト・ライヴが、なんと全編ステレオで残されていたのです。
指揮はヨーゼフ・カイルベルト。プロデューサーは、当時まだヴィクター・オロフの助手だった若き日のピーター・アンドリー(後に「アート・オブ・コンダクティング」にも出演)が務め、エンジニアは辣腕ケネス・ウィルキンソンと、技術力のロイ・ウォレス、そしてまだ若かった後の天才エンジニア、ゴードン・パリーがアシスタントというデッカ気鋭のチームにより、ステレオ録音そのものが大変珍しかった時代に、『指環』全曲のライヴ・レコーディングがおこなわれていたのです(ちなみにピーター・アンドリーは、オロフと共にこの3ヵ月後にはウィーンのムジークフェラインでベームの『影のない女』のステレオ録音をおこなっています)。
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「オペラのある風景」 PHOTO by TSUTOMU SHIMOGUCHI
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