オペラ座の夜ACT30 「歌劇場はラグジュアリー??③」
PRESENTED by TSUTOMU SHIMOGUCHI
更新日09.11.08 コメント:0件 トラックバック:0件
先月、先々月とバイロイト音楽祭、グラインドボーン音楽祭について紹介させていただいた。今月もお時間を頂きこの夏、いろいろ感じたことを記させていただきたい。
■客観的にいってグラインドボーン音楽祭は日本ではそれほど尋ねる人は多くはない。というのも本来イギリスの特権階級の会員による音楽祭という性質が強く残っているから。一種のクラブといえるかもしれない。またイギリスという土地はクラシック音楽を消費はしていてもドイツやイタリアのように多くの作品を生み出していないということから海外からの観客から敬遠されているのかもしれない。
94年劇場をリニューアルして拡大してからそこまでチケットが争奪戦になるということは少なくなった。以前は会員だけでほとんどの公演のチケットが売り切れていた。しかし現在はメイリングリスト会員という安価な登録料を支払えばほとんどチケットは押さえることができる。チケットが取れると郵送で送られてくるのだが一緒にレストランやピクニック、ワインリストなどの案内も同封される。これらをゆっくり吟味して当日を個人的なラグジュアリーなフェスティヴァルとしてしっかり準備をする。またロンドンまでの交通機関の案内までついていてかゆいところまで手が届いています。
■これに対してバイロイト音楽祭。会員制度は確かにあるが基本、申し込めば誰でも観劇することは可能だ。ただ大作曲家ワーグナー自身が創設した音楽祭という強力なブランド力もありここに訪れたいという人は世界中に大勢いる。そんなこともありチケットの順番が回ってくるまで10年以上かかるとも言われている。
予断だがワーグナーに興味がありいずれバイロイトになんとなく行ってみたいと思っている人はぜひ申し込んでおくことをお勧めする。一度申し込めばたとえ外れたとしても申し込んでいる限り毎年バイロイト音楽祭の案内がただで郵送されてくる。ちょっとした資料としてもうれしいものだ。やはり本家本元、というものにはひかれる。こうしたブランド力は絶大だ。ワーグナー自身が構想して自分の作品の上演をするために創設したのだからそれもうなずける。ただこのブランド力があるせいで近年の音楽祭からは若干取り残された部分もあるように私は感じる。
まずこの劇場の施設は伝統という言葉のせいか近代化があまり行われていない。客席に空調がないのも有名な話だ。もし空調を新設しようとしてもワーグナー自身が創造した音響設定に影響が出てしまうと懸念する声もある。また会場にはエレベーターもない。高齢者は急な階段を歩きながら客席に向かっている。また関係者が賃金の問題でストが起きたりもした。舞台設備も乏しく演出的にも制約があるとも聞く。
総監督がワーグナー自身の孫、ヴォルフガングからひ孫であるカタリーナとエーファへと代替わりした2009年。今後こうした部分でもいろいろ改革が行われていくはず。会場が居心地よい空間に変わっていくかもしれない。また劇場の施設も改修されるかもしれない。しかしここ数年音楽祭としての入場料は安い部類に入っていた音楽祭。2010年度からはチケット代の値上げも行われる。こうした値上げがバイロイト音楽祭としての今後の存在意義に役立て行くのか見守っていくしかない。
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▼下口 努(しもぐち つとむ)
1966年東京生まれ。映像プロデューサー、音楽愛好家。FM横浜、J-WAVEなどラジオ・ディレクターを経てCS放送の音楽専門チャンネルに転職。テレビ・ディレクター/プロデューサーとして夏のフェスティバルやアンプラグドなど数多くの音楽番組を手がける。現在は様々なエンターテインメント専門チャンネルを運営するCS局でプロデューサーとして活躍している。共著に「ワーグナーの力」(青弓社)がある。
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