「パフォーマンスの壺」
第35 回「バスガイドさんに学ぶライブの運び方」
PRESENTED by HIROO SATO
更新日10.08.14
みなさんも修学旅行の経験はあると思います。私たちは修学旅行の移動は飛行機や新幹線なども使いますが、現地に着いてからはバスで移動することが多かったはず。バスにはバスガイドさんがいて楽しく案内や説明をしてくれたと思います。
さて、それがライブと何の関係が
あるのかとお思いの方もいるでしょうね。
実は関係は大ありなのです。
■バスガイドさんはまず、我々生徒に「今日一日、みなさんの旅のお供をさせていただきます、○○観光の鈴木花子です」と車内のマイクを使って挨拶をしてくれます。さて、この時、生徒たちは「け、くだらねー!」と誰も相手にしなかったでしょうか?それとも生徒全員が耳をダンボにして聞いていたでしょうか?そうです。もう生徒たちは鈴木花子さんに釘付けになっていたはずなのです。これはいったいなぜなのでしょうか?生徒たちは「きっと楽しませてくれるに違いない」と信じて疑わなかったからです。
バスガイドさんというのは車窓から見える観光案内だけでなく、バスから降りても観光名所の説明もしますし、何とバスの中では歌まで披露してくれます。つまり、ためになる話しや楽しい歌を一日中繰り出しながら、生徒を飽きさせないでいるわけです。これ、実にライブですよね。歌に伴奏なんてなくても歌いますよ。バスガイドさんは。さて、ではなぜ生徒たちはいきなり現れた見知らぬバスガイドさんに楽しまされてしまうのでしょうか?実はこれこそが、ライブでお客さんを楽しませるための秘訣でもあるのです。ではこの秘訣を探ってみましょう。
まず第一にとても重要なのがバスガイドさんはマイクでしゃべるということ。人は学生に限らず、ひとつの空間に集合した時、誰かがマイクでしゃべりだせば聞いてしまうものなのです。これはとても重要で、私はマイクを持った人がその空間を一番支配できる人物であると確信しています。そしてその第一声の善し悪し如何でその空間にいる人間たちをどこまで支配できるかがわかります。万が一、バスガイドの鈴木花子さんがぼそぼそ頼りなさそうに第一声をしゃべりだしたのならどうでしょう?生徒たちは「おいおい、このガイドさんだいじょうぶ?」と思ってしまいます。しかしバスガイドさんが元気よく「はい、みなさんおはよーございます。今日一日みなさんの旅のお手伝いをする鈴木花子と申します。よろしくお願いしますー!」という具合ならば生徒たちは朝からいきなり楽しい気分になってしまうのです。
で次にバンドのボーカリストは同じようにマイクを使って歌ったりMCしたりしますが、どうも客席はこの修学旅行の生徒たちのように目を輝かせて聴いてくれているかというとちょっと違うような人が多いように思います。
さて、これどこが違うのか?
はい、バンドのボーカリストさんとバスガイドさんでは基本的に考え方から違うので聞いている側も気分が変ってしまうのです。
どういうことかと言いますと、バンドのボーカリストさんたちは「じゃあ、オリジナルを聴いてください」と言っていきなり歌い出します。これ、極端に言えば、お客さんに自分の歌を押し売りしている状態なのです。ところがバスガイドさんはいきなり歌にはいかず、まずは自己紹介し、今日の予定を話し、その場所にまつわる言い伝えや歴史を話し、そしてそこで歌い継がれてきた歌を聴かせるのです。これ、どこが違うのかと言いますと、バンドのボーカリストは基本、自分の押し売りですが、バスガイドさんは自分のことなど、一言も言わないし、まして「オリジナルを聴いてくれ」なんてことはありません。バスに乗っている人たちに長時間なのにもかかわらず、ずっと楽しんでもらうための手段を次から次へと繰り出し続けている姿勢と考え方なのです。
ここから学べるものは何でしょうか?
そうです。相手の立場に立ってライブをしていけば修学旅行の生徒たちと同じようにライブのお客さんも楽しませられるのです。
ちょっと想像してみてください。この修学旅行のバスにあなたがバスガイドさんの代わりに一日ライブしにいくと仮定してみてください。どうします?学生たちはあなたのライブにどこまで付いてきてくれるでしょうか?そしてあなたはいったい何分間生徒を釘づけにできますか?バスガイドさんは半日でもずっと釘付けできますよ。そして帰り際には生徒たちと一緒に写真なんて撮っているかもしれませんね。ですので、自分勝手なオリジナル曲の押し売りライブは見知らぬ人に通用させるのは非常に難しいということになるのです。
そこで、バスガイドさんからライブ術を
学べるべき点はどこだろうというわけなのです。
ライブハウスでは窓からの景色を説明するわけにはいきませんし、ずっと近所の観光案内をしゃべるわけにもいきません。ですのでまずは基本的な考え方を学びます。まずはお客さんにどう楽しんでもらうのか?オリジナル曲でいいのか?何をしゃべったらみんなが聞いてくれるのか?そしてバスガイドさんと同じように最後には「一緒に写真を撮ってもいいですか?」と言われるようなライブができるのか?ライブするという発想をまずはそこに持って行ってしかるべきなのです。あなたはライブをしたいからという自分勝手な理由でライブをしてきたはずです。でも、あなたの歌と演奏とオリジナルは高いお金を払って聴く必要が本当にお客さんにとってあるのか?「そーだよなあ」と思うのならば、今すぐ発想の転換をすべきです。もし、せっかくお金と時間を使って来てくださっている人に「楽しかった」と言わせられないのならライブはやらなくてもよかったかもしれないのです。
バスガイドさんはミュージシャンでもなければ有名人でもありません。職業、つまり仕事なのです。だから半日でも一日でもあるいは三日間でも生徒たちを釘づけにしなくてはなりません。そしてそれをやってしまいます。あなたのライブは仕事ですか?趣味だから、または自己満足なのだから「別に聴きに来たい人がくればいいじゃん」という姿勢ですか?実はここが楽しいライブをする人とそうでない人との分岐点なのです。
ライブはあなたがやりたいからやるのではなく、
お客さんを満足させるためにやる、これが基本。
そのためにバスガイドさんと同じようにここではこういう話をし、ここでこういう歌を歌うというあなたなりのマニュアルがまずは必要というわけです。「MCとか苦手なんで」とかいうバスガイドさんはいませんよね。じゃあ、バスガイドさんは特別な人でしょうか?みんな普通の女子高生だったんです。
ですからあなたもお客さんを楽しませるライブが絶対にできるはずです。普通の女子高生だった人ができるのですからぜひ考え抜いてやってみてください。
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■PROFILE 佐藤ヒロオ
1962年9月18日生まれ。ライブハウス、「荻窪ルースター」、「Rooster NorthSide」オーナー。音楽雑誌などの執筆他、著書に『荻窪ルースター物語』(ポット出版)がある。
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▼「地階から胃薬」
このコーナーはルースター総支配人による不定期更新のコラムです。ルースターの事、総支配人の事、出演者の事、お客様の事をはじめ、ルースターにまつわるいろんな事柄をご紹介しております。お茶でも飲みながらゆっくりとご覧くださいませ。
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||||| ROOSTER NORTHSIDE BLUES SESSION |||||
■毎週(月曜日)、「ルースター・ノースサイド」で行われております「BLUES SESSION」の模様を一部VTRにしましたので、お時間のある方は是非ともご覧下さいませ。セッションに参加された皆さん、楽しそうに演奏しておりました。
▼PART-1
▼PART-2
▼PART-3
||||| 「パーフォーマンスの壷」BACK NUMBER ||||||
第01回「ライブステージング術」
第02回「ブルースセッションの楽しみ方」
第03回「うまい拍手の取り方」
第04回「見知らぬお客さんへの配慮を忘れずに」
第05回「してはならない身内ノリ」
第06回「客席との会話が最終的な盛り上がりへ導く」
第07回「ライブ中に困った場合の対処法」
第08回「バンドメンバーをものせてしまうテクニック」
第09回「言ってはいけない言ってしまいがちなMC」-PART1-
第10回「言ってはいけない言ってしまいがちなMC」-PART2-
第11回「ライブ成功の鍵はライブの前の挨拶から」
第12回「ライブ前の知り合いへの挨拶は控えめに」
第13回「お客さんに一緒に振り付けをしてもらうテクニック」
第14回「ライブパフォーマンスはバンド全員でこそ。」
第15回「選曲方法をもう一度考えてみる。」
第16回「自分を下げてお客さんを上げるステージング術」
第17回「おやじバンドの初ステージ!」
第18回「ライブハウスでのリハーサルの仕方。」
第19回「人に見られることを鍛えてみる」
第20回「人の技みて我が技増やせの巻」
第21回「ライブの流れを決めるキーワードの巻」
第22回「ステージと客席の壁はなぜできるのかの巻」
第23回「お客さんが少ない時のライブ方法」
第24回「言ってはいけない言ってしまいがちなMC」
第25回「MCが苦手な人のほうが正しいMCが上手になる?」
第26回「その道のプロに学ぶライブに対する考え方。」
第27回「聴いていないお客さんをライブに集中させるテクニック。」
第28回「すぐできる盛り上げ術あれこれ」
第29回「ミュージシャンも客商売。」
第30回「頭が真っ白になった場合の対処法」
第31回「ライブ場所選びもお客さんのことを考えて」
第32回「プロのライブ場所によるステージングの違いから学ぶ。」
第33回「予想と違うMCで意表を突き、和ませる術」
第34回「初対面との人と会った時の会話」を利用した心を開くステージング術
||||| SELECTED★IMAGE |||||
■今回の「パフォーマンスの壷」その35ではHIROO SATO氏はバスガイドさんの話題に触れていました。そこでかなり強引ではありますが、早速「バス」が大きなテーマになっている曲がないものかと考えていたら、2曲ほど頭に浮かんできました。ひとつは1972年に大ヒットした歌謡曲で平浩二さんの「バスストップ」。バスを~♪待つ間に~♪の歌詞とメロディーが印象的でした。そしてもうひとつは、イギリス出身のポップ・ロック・グループ「The Hollies」(ホリーズ)の「Bus Stop」でした。
今の若い音楽ファンはいったいなんのことか全く分らないでしょうが、2曲ともオールド・ファンの方々は良くご存知だと思います。どちらもなかなか哀愁漂う素晴しい曲です。特にホリーズのBus Stopは最初のギターのイントロとサビの部分は、1960年代の香りがいっぱい詰まった独特のグルーヴがありました。そこで、今回のSELECTED★IMAGEではホりーズのBus Stopをピックアップしました。
▼The Hollies - Bus Stop - 1966 (live)
■The Hollies(ホリーズ)は1960年代初めにイギリス・マンチェスターで結成されたロック・バンド。そしてビートルズ並の高品位なポップ・サウンドと明るく爽やかなボーカルとハーモニーで一躍1960年代を代表するイギリスのグループとなりました。この「Bus Stop」は1966年のヒット曲で全英2位、米チャートでも5位にランクインし、日本でもかなり人気がありましたね。作曲は後に10CCのメンバーとなったグラハム・ゴールドマンによるもの。そもそも小学校の同級生同士であったアラン・クラーク(リード・ボーカル)とグラハム・ナッシュ(ギター、ボーカル)がコーラス・デュオを結成したのがバンドの始まりで、1963年「Just Like Me」でメジャー・デビューを飾る。この映像のメンバー構成は恐らくはアラン・クラーク、グラハム・ナッシュ、トニー・ヒックス(ギター)、エリック・ヘイドック(ベース)、ボビー・エリオット(ドラム)の5人と思われます。
※因みに、バンドやアルバムの方向性に疑問を持ったグラハム・ナッシュが1968年に脱退、後にザ・バーズを辞めたデビッド・クロスビー、バッファロー・スプリングフィールドのスティーブン・スティルスと共にCS&N(クロスビー、スティルス&ナッシュ)を結成したのは広く知られている話。
1968年には来日し、大手町のサンケイホールや渋谷公会堂で公演を果たしています。その後、40年以上日本では音沙汰なしのようですが、これまで自国イギリスでは40枚以上のアルバムと70枚にも及ぶシングルをリリース。今年も「The Very Best Of The Hollies」は発売。またツアー・スケジュールを見ると現時点で今年2010年11月までヨーロッパを中心にライブの予定が組まれておりました。イギリスに限らずヨーロッパでも、まだまだ根強いファンがいるんですね。さすが、最後のBritish Invasionの偉大なるバンドのひとつとしてアメリカで畏れ?られていただけのことはあり、底力があるのでしょう。
日本では当の昔に忘れられてしまい、音楽ファンから見捨てられたようなアーティストやバンドも、実は姿、形は変わりながらも今でも着実に活動を続けいることが多く、これには本当に驚かされます。REALで良質のミュージシャン&音楽は時代を超越して生き続けることができるのかもしれません。
▼The Hollies Official Website
http://www.hollies.co.uk/
▼The Best Of The Hollies(紙ジャケ仕様)

※1960年代に日本独自ジャケットでリリースしたベスト盤を忠実に再現。1968年発売のオリジナル収録内容にボーナス・トラックを追加予定。Bus Stopをはじめホリーズのヒット曲が堪能できます。
★CD&DVDなどThe Holliesの関連作品はこちらでどうぞ!
▼「日本一ちっちゃいかもしれないギターコードブック」は、
本のコードブック1冊分に相当する多数の指板図が入っています!
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