「パフォーマンスの壺」
第49回「ライブを盛り上げるステージング術、実践編」
PRESENTED by HIROO SATO
更新日11.10.26
ライブの盛り上げ方法は山のようにあります。
みなさんはどれくらい思いつきますか?
「え、お客さんって勝手に盛り上がるんじゃないの?」もしくは「そんなの考えたことないなあ...」。そんな風に考えている人はライブが盛り上がるかどうかはお客さん次第ということになってしまいます。
以前、Tさんという方がライブをしたいというので、私にギターで参加して欲しいという依頼がありました。Tさんは趣味で歌をやられているお方で、技量もありませんし、ステージング術も知りません。何の手助けもしなければ曲名を言って歌うだけ、そんなライブになってしまうのです。ギターを弾ける知り合いは他にもいるTさんですが、私を誘ってくる理由は明確です。お客さん全員を巻き込んで楽しませるライブにしてくれということなのです。お客さんがつまらなそうな顔をしているライブならやらないほうがマシ。私はそういうタイプだから誘うのでしょう。
そういうわけで私はそのTさんがメインというスタンスを守りながらもお客さんを盛り上げるステージング術を実践してみました。
今回はその際に使用した
ステージング術について書いてみたいと思います。
まずはそのボーカルのTさん以外がステージに上がります。で、1曲目を演奏する前に私がご来店のお礼(これについては連載を読み返して下さい)とTさんについての説明をします。そしてこれから演奏を開始するという時に、次のように客席をあおります。「みなさん、いよいよTさんが、出てきます。Tさんはお客さんが盛り上がっていると本気を出す人なんです!でも出てきて歓声がなかったら今日はもうやる気を出してはくれません!さあ、出て来たら思いっきり声援を送ってくださいーー!」そういってイントロを弾き出すのです。いよいよそのイントロにのってTさんが登場!すると客席はまだ歌ってもいないのにもう大盛り上がりです。Tさんはあまりの歓声に両手をあげて笑顔で歩いてきます。
さて、ちょっとここを解説しておきます。
よくロックバンドなどは何もしゃべらず1曲目を演奏しますが、私はそれだと1曲損をしていると感じます。何もしゃべらず演奏するとお客さんは静かに様子を伺うからです。よく知らないバンドが登場し、何もしゃべらずスタートすると必ずそうなってしまいます。ファンが詰めかけるような有名ロックバンドは何もしゃべらずとも出てきただけで盛り上がりますが、一般のバンドはそうはいかないのです。なので、まずは「つかみ」。これがないとスタートしても拍手はぱらぱらって感じになります。「バンドは演奏で勝負だ」って言っている人はよくいますが、私の知る限りアマチュアバンドの方々しかそんなこと言いません。
それはともかくとしまして、ライブを仕切っているのは誰か?
これを最初に客席に提示する。まずはこの圧倒的な存在を示す必要があります。別にビッグでもないTさんが登場するのに大歓声にさせる、これは客席コントロールの手法です。ではどうするかといいますと、まずはお客さんに御来場の感謝の気持ちを表します。そして、自信アリアリのトークで客席をステージに惹きつけるのです。極端に言えばお客さんがステージを見ているのと同時に、お客さんがステージ上から見られているんじゃないかくらいの距離感・空気感にするのです。で、あのマイクを操っている人に身をゆだねてみよう、そうすれば楽しそうだって無意識に思わせるトーク術を使うのです。私のことを知るお客さんなんてほぼいないライブです。それでもぜんぜん可能です。
バラエティ番組でも宴会でもなんでもみんなを注目させまくる司会者っていますよね。その方々って緊張なんかしないし、おろおろしない。ものすごい自信に充ち溢れているように見えます。つまり、ステージでしゃべる人はそういう人を演じればいいのです。これで客席はついてきてくれます。
さて、1曲目が終わったところではTさんにMCは譲ります。Tさんが主役であることが無言で伝わります。そこで緊張しているTさんをまずはお客さんに認識させておきます。その理由はTさんの実力は失礼ながらそんなものだということをまず客席に知らせておく必要があるからです。なぜかというと、今度は客席に応援してもらう側に回ってもらう必要があるからです。というのは、Tさんには客席を引っ張る力量がないからです。いっぱいいっぱいのTさんはすぐに2曲目を始めようとしますが、まずはそのまま進行させておきます。2曲目が終わるとTさんはすぐに3曲目の説明をしはじめます。
ここでそのままにしておくともうライブは盛り上がりません。
MCが曲の説明、これは多くのみなさんは普通だと感じいておられるはず。でも、客席との壁を壊せないままの曲説明し、曲を始めるとだた説明し曲をするだけのライブになり、せっかく最初に盛り上がったのにあとはクールダウンするのみになります。それではもったいないですし、お客さんに「あー、楽しかった」って言ってもらえなくてはお金をもらっては詐欺です。なので盛り上げたいではありませんか。ですのでやっとここで私はTさんに話しかけます。「Tさん、もしかしてしゃべるネタ、あるのに忘れてたりしてませんか?」するとどうでしょう?客席からは笑い声が...。
そうなんです。
Tさんがいっぱいいっぱいなのがもう客席には伝わっている証拠なんですね。ここで笑いに持って行くことで今度は客席が「Tさんがんばれー」という気持ちに変わります。これは以前書いたことがありますが、客席の方を優位に立たせるテクニックなのです。なぜ客席が優位に立てるのかというと、お客さんはTさんがいっぱいいっぱいなのがわかってます。それを「忘れていませんか」とあけっぴろげにしたことで、やっとお客さんがTさんよりも優位に立ちました。その答えがお客さんの「笑い」です。
さて、笑われたTさんは、なんとか考えて来たMCを思うい出そうとしています。で、「あ、えーと実は考えて来たんですが...」としゃべりはじめるTさん。するとどうでしょう?また客席から笑い声が起こります。そして何を話すのかなという温かい目空気に客席は包まれます。つまり、この順序が客席を温めるのです。
さて次の曲ではギターソロが回って来ました。
私はステージ中央まで行き、ギターを頭の後ろに回して客席に背を向けます。すると「おー」と大きな歓声が上がります。ところが、まったく弾かずに立っているだけ。なので徐々に「えー、弾かないのー」とか笑い声が聞こえてきます。しかも、よく見るとギターのシールドがつながっていません。客席の誰かが気がついて「シールド抜けてるぞー!」と掛け声をかけてきました。私はやっとギターを降ろし、シールドを確認するふりをします。そして「あ、抜けてた!」って言ってギターソロを終了しました。何も弾いていないのに大歓声になっています。これで、もう客席をあおらずにも客席側が勝手に盛り上がる空気ができました。
すると、Tさんも落ち着いてきて、考えてきたようなネタを出すようになれました。こうなってくれればあとは私は聞き役になって、わけわからんことを言った場合や、身内にしか通用しない話題を出してきた時は修正してあげればいいだけ。もう客席は完全に温まっていますのでTさんでも盛り上げが可能なのです。「いえーい」ってTさんが言えばみんな「いえーい」って返してくれる状態になっています。
というわけで、ほっといても大丈夫ですが、最後の曲でもうひと盛り上がりさせたいので今度はギターソロで客席を回ります。そして、後ろの方に空席を見つけてそこに登って弾き、ステージ上のキーボードと4小節ずつのソロバトルを展開。こうなると客席の一番後ろとステージの間にお客さんがいることになり、お客さんがバトルに挟まれている状態になります。つまり、ステージとの境界線は無くなっただけでなく、客席そのものがライブの現場になって一気にヒートアップ。ステージに戻りラストコーラスでエンディング。もう大喝采で、アンコールは鳴り止みませんでした。というわけで、たったこれだけのことで初めてのお客さんまでをもアンコールと叫ばせることが可能なのです。
これ、手順がわかれば誰でもできると思います。
お客さんの心を開き、距離を縮める、縮まったら盛り上げる。一度盛り上がったらあとは自由自在です。つまり、こういうことです。ライブが盛り上がらないのを誰かのせいにしたりせず、あなたが盛り上げ隊長になってください。
ライブはステージング術を知っていれば必ず成功いたします。
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■PROFILE 佐藤ヒロオ
1962年9月18日生まれ。ライブハウス、「荻窪ルースター」、「Rooster NorthSide」オーナー。音楽雑誌などの執筆他、著書に『荻窪ルースター物語』(ポット出版)がある。
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▼「地階から胃薬」
このコーナーはルースター総支配人による不定期更新のコラムです。
ルースターの事、総支配人の事、出演者の事、お客様の事をはじめ、ルースターにまつわるいろんな事柄をご紹介しております。お茶でも飲みながらゆっくりとご覧くださいませ。
http://www.ogikubo-rooster.com/main/column/index.html
□■「荻窪ルースター物語」インタビュー by YouTube■□
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||||| ROOSTER NORTHSIDE BLUES SESSION |||||
■毎週(月曜日)、「ルースター・ノースサイド」で行われております「BLUES SESSION」の模様を一部VTRにしましたので、お時間のある方は是非ともご覧下さいませ。セッションに参加された皆さん、楽しそうに演奏しておりました。
▼PART-1
▼PART-2
▼PART-3
||||| 「パーフォーマンスの壷」BACK NUMBER ||||||
第01回「ライブステージング術」
第02回「ブルースセッションの楽しみ方」
第03回「うまい拍手の取り方」
第04回「見知らぬお客さんへの配慮を忘れずに」
第05回「してはならない身内ノリ」
第06回「客席との会話が最終的な盛り上がりへ導く」
第07回「ライブ中に困った場合の対処法」
第08回「バンドメンバーをものせてしまうテクニック」
第09回「言ってはいけない言ってしまいがちなMC」-PART1-
第10回「言ってはいけない言ってしまいがちなMC」-PART2-
第11回「ライブ成功の鍵はライブの前の挨拶から」
第12回「ライブ前の知り合いへの挨拶は控えめに」
第13回「お客さんに一緒に振り付けをしてもらうテクニック」
第14回「ライブパフォーマンスはバンド全員でこそ。」
第15回「選曲方法をもう一度考えてみる。」
第16回「自分を下げてお客さんを上げるステージング術」
第17回「おやじバンドの初ステージ!」
第18回「ライブハウスでのリハーサルの仕方。」
第19回「人に見られることを鍛えてみる」
第20回「人の技みて我が技増やせの巻」
第21回「ライブの流れを決めるキーワードの巻」
第22回「ステージと客席の壁はなぜできるのかの巻」
第23回「お客さんが少ない時のライブ方法」
第24回「言ってはいけない言ってしまいがちなMC」
第25回「MCが苦手な人のほうが正しいMCが上手になる?」
第26回「その道のプロに学ぶライブに対する考え方。」
第27回「聴いていないお客さんをライブに集中させるテクニック。」
第28回「すぐできる盛り上げ術あれこれ」
第29回「ミュージシャンも客商売。」
第30回「頭が真っ白になった場合の対処法」
第31回「ライブ場所選びもお客さんのことを考えて」
第32回「プロのライブ場所によるステージングの違いから学ぶ。」
第33回「予想と違うMCで意表を突き、和ませる術」
第34回「初対面との人と会った時の会話」を利用した心を開くステージング術
第35回「バスガイドさんに学ぶライブの運び方」
第36回「ライブ後にありがちなシーンの切り抜け方」
第37回「バンドにも不可欠なコンセプト」
第38回「客席と目を合わせることの重要性」
第39回「お客が引いてしまう原因と常識を知る」
第40回「ライブ告知に潜む落とし穴。」
第41回「パーティにはやりたい曲よりも盛り上がる曲を。」
第42回「行きたくなるライブ告知の仕方」
第43回「自分たちがメインではない場合のライブ方法」
第44回「エンターテイメントは計算ずくで」
第45回「ライブハウス以外で演奏する場合の心得」
第46回「お客さんはライブに何を求めているのか?」
第47回「お客さん全員がついてこれるライブの仕方。」
第48回「常連しかいないお店からライブ方法を学ぶ」
||||| TODAY'S SELECTED★IMAGE |||||
■以前このコーナーで若き凄腕女性ベーシスト「Tal Wilkenfeld」をご紹介しましたが、今回も素晴らしいカナダ出身の女性ベーシストを採りあげたいと思います。そのマーベラスかつ卓越したパフォーマンスで高い評価を得ているRhonda Smith(ロンダ・スミス)です!彼女のプレイはとにかく超絶ものでアグレッシブ!迫力も半端じゃない!私は今まで彼女ほど素晴らしいテクニックでファンキーかつアクティヴにベースを弾きこなす女性を見たことがない気がします。
■ジェフ・ベックやプリンスのファンにとってはすでにお馴染みのミュージシャンでしょう。彼女のプレイ・スタイルはまさに変幻自在で、本業であるベースの腕前は超一流であるのは言うまでもありませんが、ヴォーカル、ソンガライティングにおいてもその才能を遺憾なく発揮し、スムース・ジャズにはじまりファンク、ロックなど様々なジャンルを事もなげにこなしてしまうアビリティーとユーティリティーも持ち合わせています。そして音楽界における至宝の1人として多くのファンから注目を集めてきました。ルックスも文句なしでずば抜けた存在感も見逃せません。
||||| VIDEO ON YOUTUBE |||||
ひとつやふたつの映像だけで、ロンダ・スミスの実力なり魅力を理解するのは到底無理な話ですが、彼女が只者ではなさそうだ!と言うことくらいは伝わるのではないかと!?
▼2010年4月13日の来日公演から・・・
Jeff Beck - Smith Bass Solo - People Get Ready
||||| About RHONDA SMITH |||||
カナダ東部、ノバ・スコシア州ハリファックス生まれ。幼少期に家族はモントリオールに移り住む。フランス色の濃い美しいモントリオールはジャズの盛んな街としても有名。そこで音楽一家と言う申し分ない環境のもと、幼年期のロンダは3人の兄達と様々な音楽と出会い、それぞれバリトン・ホーン、ギター、キーオード、ベースなどの楽器を学ぶようになります。12歳になって、お兄さんが持ってきたベースをこっそり弾き始めたのがきっかけでベースを始めたとのこと。やがてロンダは更なる音楽的素養を探求すべく、モントリオールにあるマクギル大学に進学しそこでジャズを勉強することとなりました。在学中から男性優位なロックシーンの中で数少ない女性ミュージシャンとしてツアーに参加し始め、スキルとタフさを養っていきました。その後も多くのカナダの著名ミュージシャンと仕事をするようになり、有名ジャズ・プレイヤーであるジム・ヒルマンのアルバム「ザ・マーリン・ファクター」のベースを担当するまでになりました。そして、そのアルバムがカナダではグラミー賞に相当する「JUNO AWARD」で「The Best Contemporary Jazz Album」を受賞し、一躍カナダをはじめ、アメリカやヨーロッパでも知られるアーティストとなったわけです。
その後、Sheila E.が取り持つ縁でPrinceのベーシストに採用され10年もの間、アルバムにツアーにとプリンスのサウンドを支える重要な役割を担ってきました。さらに、Chaka Khan、Beyonce、Patti Austin、Patrice Rushen、Brenda Russell、Lee Ritenour、Larry Graham、Patti Labelle、Little Richard、Justin Timberlake、Najee、Candy Dulferなど多くの一流アーチストとの共演を果たしてきました。確かCandy DulferやSheila E.のバック・メンバーとして来日していましてね。記憶に新しいところでは、前掲したYouTubeの映像にあるように昨年4月にJeff Beckのメンバーとして見事なステージを披露してくれましたね(この時、ジェフ・ベックのファンはてっきりTal Wilkenfeldかとばかり思っていたところ、ロンダ・スミスとなっていたので驚いたそうな...)。とにかく、ファンキーかつ迫力あるパフォーマンスでオーディエンスを大いに沸かせてくれました。この10月から11月にかけて「JEFF BECK CANADIAN TOUR」のバックを務めジェフ・ベックをサポートでツアーに参加しています。
2000年にファート・アルバム「Intellipop(インテリポップ)」をリリース。そして2006年、2枚目のリーダー・アルバム「Rs2」を発売!このアルバムでは4、5、6弦ベース、フレット・フレットレス、ピッコロベース、さらにコントラバスなどを巧みに弾きこなしその多彩な才能と抜群のベース・テクニックはもちろんのこと、自身のヴォーカルも披露するなど多様な質の高い音楽性で存在感を強烈にアピールしました。
▼最後にRhonda Smithのソロをもう1曲!
■ロンダ・スミスはファンはもちろん、長きにわたり大物アーティスト達から高い評価と信頼を寄せられているアーティストであり、まだ彼女のベースを聴いたことのない方はこの機会に一度、CDを聴いてみるなり映像をチェックするなりRhonda Smith Soundを試してみてはいかがでしょうか?こんなにクールでファンキーでエモーショナルな凄い女性ベーシストがいるのか~!と思いますよきっと・・・。
※余談ですが、ジェニファー・バトゥン、タル・ウィルケンフェルドそして今回のロンダ・スミスなどジェフ・ベックは凄腕女性アーティストの起用の仕方が旨いです。彼女たちのスキルや魅力を引き立たせてくれる演出は実に見事ですね。そんな彼も今年で満67歳になったんですね。しかしギター、音楽への情熱はいっこうに衰える気配がありませんし、常に新しい事にチャレンジする姿勢は20代そのものです。さて、ロンダ・スミスの次に今度はどんな女性アーティストをセット・アップするのか?ちょっと楽しみです。個人的にはド迫力の辣腕女性ドラマーあたりに期待したいところですが...。
||||| Rhonda Smith★Albums |||||
▼Intellipop

▼Rs2

||||| REFERENCE★WEBSITE |||||
▼Rhonda Smith Website
http://rhondasmith.com/
▼Jeff Beck Official Website
http://www.jeffbeck.com/
★Jeff Beckの関連作品はこちらで!
▼Prince -21 Nights Official Site-
http://www.simonandschuster.com/specials/prince-21-nights/
★PRINCEの作品集はここで!
▼Candy Dulfer Official Website
http://www.candydulfer.nl/
★Candy Dulfer関連作品はこちら!
▼Sheila E. Official Website
http://www.sheilae.com/
★Sheila E.の作品集はここで!
||||| BOOK★WORM FOR GUITARIST |||||
||||| EXTERNAL★LINKS |||||
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